モラトリアムを抱きしめて

「運良くチケッ、ト…」

私は夫が話し終える前に、飛び付くようにしがみつき、うわんうわんと声を出して泣いてしまっていた。


一通り泣き叫んだあと、夫に促されベンチに腰掛ける。やっぱりひんやり冷たい。

さっきまでの不思議な体験、母のこと、兄のこと……。

全てを話した。話し終えるまで夫は疑いもせず、静かに相づちをしてくれていた。


「不安なの」

「何が?」

夫は震える手を私ごと抱きしめてくれる。

思い出してみても、私が知った人の温もりはこの人が初めてだった。

だからだろうか。どこか懐かしくとても安心する。