モラトリアムを抱きしめて

こうやって誰かに抱きしめてほしかった。

「泣いてよ、お願い」

そう言うと、はっちゃんは力を抜いて静かに一筋だけ涙を流した。

泣いて護れるものならば、沢山泣けばいいじゃないか。

そんな簡単な事すら知らなかった。

知らなくていいことばかり知っていた。

知らなくてはいけないことを何も知らずに。

見えなくていいものばかりを見ながら。


いつも何かに餓えていた。

寄りかかる木さえなかった。

あの頃、渇いていたのは喉だけじゃなかった。