モラトリアムを抱きしめて

立ち止まり、鼻水をすすり、涙を拭いた。

今じゃない。

そう自分に言われているようで。

死ぬんなら、あの時とっくに死んでいる。


一番信頼していた人に傷つけられたあの日――

今日みたいに、晴れているけど寒い、冬の日。


私は兄に殴られた。


拭いたはずの涙が頬を伝うので、目を綴じると、あの日の記憶が少しずつ映し出されていた。

そのたびに襲う頭痛の向こうには11歳の私。


記憶の中の私は必死に走っていた――