モラトリアムを抱きしめて

「寒っ」

寒気がして目が覚めると、いつの間にか毛布がかけられていて、ソファーも私が占領していた。

私がいた筈の場所には、はっちゃんが得体の知れないものでも見ているかのような目でジーっと私を覗いている。

私もよく夫の寝顔を見つめてしまう。自分がそうであるように、はっちゃんもまたそうなのだろうか。

目覚める時、誰かと繋がっていたいと時々思う。それはただの視線だっていいのだ。

そう思うようになったのはいつからだっけ。

「おはよ」そう短く言ったはっちゃんは、よく眠れたのかスッキリした顔をしていた。

心なしか顔色もいいように思う。色白のはっちゃんだから、あまりわからないのだけど。

私は大袈裟に伸びをして、「おはよう」の語尾と一緒に欠伸をひとつした。