「君は子どもがして欲しい事を知っていて、それを叶えてあげられる。 何がそんなに悪いの?」

本当に裕福な人というのは、見下すという事を知らない。

「僕はね、沢山のものを与えられて育った。 欲しいものはあったし、欲しくないものもあった。 正直、僕は本当に欲しいものがわからないんだよ」

「君以外はね」なんて言葉を付け加え、夫は少し照れたように笑っていた。

「君が落ちそうになったら僕が引き上げるから、僕が落ちそうになった時は君が上げてくれないか?」

落ちるところまで落ちたから、これ以上落ちられないよって言いたかったけれど、言葉にならなかった。


まだ、あの時の絶望にいると思っていた。


時は流れていたんだ。