おばば様は布から手を離すと、真っ直ぐにあたしを見た。


「たんと悩まれよ。答えは、迷うて迷うて出すものじゃ。なれど嬢様、どんな答えでも、ばばは嬢様の味方じゃ」


ありがとう、おばば様


あたしは声にならない『ありがとう』を言いながら、おばば様に抱き着いた。


子供の頃母に連れられて、おばば様の仕事場に来たことを覚えている。

あたしは、おばば様の機織りをずっと見ていた。

飛ぶように糸の間を滑る杼(ひ)と、織り上がっていく模様が不思議で、これは魔法なんだと思っていた。

おばば様はあたしを膝の上に抱き上げて、織りかけの布を見せてくれたっけ。


『これは嬢様と姉上様の冬のお衣裳じゃ。どうだえ?』


『きれい……おばあちゃんは魔法を使うのね?』


『魔法?』

おばば様は笑った。

『魔法ではありませぬ。じゃが、機織りはこの世界と同じじゃぞ』