近くまで行くと、王妃様は笑いを噛み殺していた。

「アレクサンドラ、胸がスッとしました」


あたしはニッと笑って王妃様の斜め後ろに立った。


王様が立ち上がった。

「では、余が命じる。その娘を――ホーク、何の真似だ?」


ホークは剣の切っ先を王様の喉元に突き付けていた。


「その娘はわたしの許婚者です。誰かが指一本でも触れれば、王とても我が敵。覚悟召されよ」


「許婚者だと? 許可した覚えはないぞ」


「でしょうね」

ホークは面白がるように言った。

「許可されたのは先王ですから。どこかに誓約書があるはずですよ」


「馬鹿な! 父の代の話なら、あの娘は生まれてもいないだろう」


「ええ、母親の胎内です――ああ、当事者がいた。ごきげんよう、ファウラー卿。父との取り決めを説明してくれないか?」


あたしの父の従弟だというファウラー卿は、あたしにも初耳な話を語った。