「ドレスは……これでいいわね。好きな色だから。アレクサンドラ、そなたが刺繍してくれた帯を締めておくれ」


王妃様があまりにも平然としていたので、あたしは何が起きているのか飲み込めずにいた。


間もなく、王の使者として室内に入って来たのは、レディ·クリスタルだった。


「ごきげんよう、イヴェイン様」


深紅のチュニックを着たレディ·クリスタルは、艶やかに微笑みながら入って来た。

さすがに修道女姿のあたしの事は、気付かないみたいだ。


「レディ·クリスタル、お役目ご苦労です」


「お久しぶりですわ。四年も経つのですもの、もっとお変わりになっているかと思っていました。例えば、全く別人のように、とか」


「期待に添えなかったのなら残念です」


「もうお分かりでしょうけれど、王がお呼びです。すぐに出立されますように」


「分かりました――外套を」


王妃様はあたしの方に手を差し出した。

あたしは急いでマントを着せかけた。