「ゴメン……ゴメンね、ローズマリー。あたしには出来ない」


あたしはズルズルと座り込んで泣いた。

ユニコーンが不思議そうな眼差しであたしを見つめ、慰めるように鼻面を擦り付ける。


殺せるわけがない。

命を奪うために召喚したんじゃないもの。


ユニコーンの召喚魔法は失われた。

もしかしたら、あたしみたいな誰かが、故意に記録を消し去ったのかもしれない。

後は、あたしが口をつぐめば、もう世に出る事はない。


どれくらい長い間泣いていただろう。


草を踏む微かな音に目を上げると、王妃様が不思議そうな顔であたしを見ていた。


王妃様は、『来てはいけません』と言うあたしを片手で制した。


「大丈夫です。わたくしは王と寝所を共にしたことはありませんから」


王妃様は、あたしの前に腰を下ろした。

一瞬、ユニコーンがビクッと頭を上げたけれど、またすぐに鼻面を擦り寄せて来た。