『侍女はいないの? わたくし、一人で身仕度をしたことなんかないわ』

ツンと顔を上げて場違いな台詞を吐いたのが、ゴージャスな赤銅色した巻き毛のジェニスタ。

何とか伯爵の三女――悪いけど、あんたの親の名前なんか知らないわよ。


『まだ朝じゃないの! 家では寝ていた時間よ。ああ、兄上ときたらあの女の口車にすっかり乗せられて、わたしをこんな所に入れるなんて、信じられない』

黒髪のロザリンドは、とってもとっても高貴な侯爵様の妹君――あっ、そっ

因みに彼女が言う『あの女』とは、兄嫁の事。

あたしが兄嫁でも、昼まで寝ている義妹なんてたたき出すな。


貴族の女の子って、みんなこんななの?


呆気に取られて三人を見ていると、気取り屋のジェニスタが、あたしをジロジロと見た。


「あなた、昨日もいた?」


「いたわ」

あたしはすまして言った。


「そう? まあ、そんな目立たない髪なら覚えているわけがないわね」


そう? まあ、あんたの頭なら自分の顔を覚えていればいい方ね。