「お前も休んだ方がいい。今にも倒れそうではないか」

ホークがあたしの頭を抱き寄せて言った。


母は村に泊まり込む事になって、あたしは伯爵家に引き取られた。


先代伯爵夫人が『大変だったわね』と出迎えてくれた。

その後、お湯を沸かしてもらって、血や何だか分からないモノで汚れた髪と体を洗った。

伯爵家では川から水を引いて、飲み水以外の生活水にしていたので、湯浴みをするのは比較的楽に出来るけれど、さすがに一日に二回も手間をかけさせるのは気が引けた。


「つまらない事を気にかけるのはおよしなさい。ここはあなたの家も同然ではありませんか」

先代伯爵夫人はそう言ってくれたけれど、『いつまでも』って訳にはいかないと思った。


もうすぐ、ホークは奥方を貰うだろう。


大人の女性の気持ちはよく分からないけれど、姑の名付け子が我が物顔で家をうろつくのを喜ぶとは思えない。


あたしの周囲で色々な事が変わって行くのは、寂しいけれど、不安だけれど……


「仕方ないよね」

ベッドに横になって、あたしは一人呟いた。