でも、それはホークの言った通り、毎年恒例の事だ。

そうでなかった年なんか思い浮かばない。


キョトンとしていると、ホークが『ほらね』と言った。

「何がいけないのか、アレクサンドラには分からないのですよ」


「困った人達だこと」

先代伯爵夫人はため息混じりに言った。

「いらっしゃい、サンディ。湯浴みをして、祭りの支度をしなくてはいけませんよ」


「朝食を食べさせていませんからね」

念を押すようにホークが言った。


「部屋に用意させますから、心配しないで」

先代伯爵夫人はそう言うと、あたしをせき立てて連れ去った。



今年の五月祭のドレスは、深緑色のどっしりとした生地で仕立てられていた。

衿元に同色のレースがあしらわれていたけれど、派手なフリルもリボンもない。

裾が短めなのを除けば、五月祭のドレスらしいところはどこにもなかった。


「今年は、少し大人らしくしてみたのですよ」

母にドレスを着せてもらっているあたしの後ろで、先代伯爵夫人が言った。