大地くんの天気予報



…そんなことを思いながら、俺は自転車を走らせていた。




桜の季節も終わり、立ち並ぶ家々の庭先には、ところどころ藤の花が咲いているのが見えた。




ある公園の前にさしかかった時、公園の小さな藤棚の下で、その垂れ下がる藤の花を一人で見上げている人がいた。


その藤棚の下には、木製の長いベンチが置いてあり、俺は時々そこで仰向けになりながら、ボ~っと時間を過ごすのが好きだ。


でも、今日はそこに先客がいる。


その人は、ベンチには座らずに立っているけれど、そんなところにいられちゃあ、堂々とベンチに向かうことなんて出来ない。


しかし、俺の自転車はすでに公園に入る体勢になっており、そのまま方向転換してはかえって不自然だった。


その人が俺に気付いて、自分のせいで俺を引き返させてしまったと思わせるのも、何だかイヤだったし、…まぁ、別にそこまで深く考えていたわけじゃないけど、俺は公園の入り口付近に自転車を止めると、藤棚よりも向こうにある普通のベンチを目指して、何食わぬ顔で歩き始めた。