そうして僕がうつむいていると、まるで何事もなかったかのように、絢姉さんはパッと顔を明るくして言った。
「エイサクさぁ~ん、いらっしゃってたんですかぁ?」
甘えるような声で、エイサクさんの肩に手を置き寄り添う絢姉さん。
「おうおう、アヤちゃん!お稽古お疲れさん!」
「最近なかなかお会いできなくて、私寂しかったんですよぉ~?」
そんな絢姉さんの態度にもすっかり慣れている様子で、エイサクさんも絢姉さんの腰に手を回して笑っていた。
まるで、ホステスとお客さんみたいだ…。
そんな様子を見ていた母さんが、小さくため息をついて言った。
「…絢ちゃん、そんなにベタベタくっつかないの」
母さんの言葉に少し唇を尖らすと、絢姉さんは、フン!というように、エイサクさんの体を軽く突き放した。
絢姉さんのそんな態度も、皆おなじみの、いつものことだ。
僕が九州から一年ぶりに帰って来た今も、やっぱりそれは変わっていなかった。
