ドクン……。 その人の姿を見て、僕の胸は一瞬、締め付けられた。 控え室の入り口で、顔を伏せたまま正座をし、手に持っていた道具を膝の前に置くと、手をついてお辞儀をした。 「お先に失礼いたしました」 自分の稽古が終わった後に、他のみんなに対してする挨拶だ。 「お疲れ様でした」 それに応えて、この場にいる僕と母さんもお辞儀をする。 僕は、ゆっくりと顔を上げた。 その人は、僕よりも少し遅く、徐々に顔を上げると、左側からエイサクさん、母さんと目を移して、そして最後に僕の顔を見た…。