…途中、背景の大きな松の木の後ろに隠れると、今度は衣装が変わって再び現れたり…、そんな、清風のいない時間があったということぐらいしか、後になって思い出せそうなことはなかった…。




…そうしてそんな意識の中で、気が付けば、清風の『藤娘』は終わりの時を迎えていた。


舞台中央で、藤の枝を持ちながらポーズを決めた清風に、客席からは、大きな拍手と歓声の波が押し寄せた。


そんな大喝采の中、清風の『藤娘』の幕は、ゆっくりと下りていったのであった…。