「…『藤娘』っていうのはね、藤の花の精の踊りなんだ。…恋をする、乙女心なんかを描いた…」
「…そうなの?」
キヨちゃんは、うん、とうなずくと、すぐそばにあった家の塀から、溢れるように咲き乱れている藤の花に近付いて、そっと触れながら言った。
「…今、僕が練習しているのがその『藤娘』で…、これまでに何回も踊ったことはあるんだけど、今度の舞台で、また『藤娘』を踊ることになってるんだ…」
「…そうなんだぁ…」
「…『いとしと書いて、藤の花』…」
「……?」
藤の花を見つめながらそうつぶやいたキヨちゃんの言葉に、オレは首を傾げた…。
