…その時、コンコン、と、ドアをノックする音がした。


「…風花、開けるよ…」


そう言って顔をのぞかせたのは、風嶺さんだった。


「…風嶺さん」


僕が少し体を起こそうとすると、「いいよ、そのままで」と言って、風嶺さんは薄暗いままの部屋の中に入ってきた。


ベッドの端に腰を下ろすと、僕の背中をさするようにして、風嶺さんは言った。


「…大丈夫か…?」


「…うん。少し横になってれば、平気…」


…僕の背中に手を当てたまま、少しの沈黙が流れ…、やがて風嶺さんは言った。


「…ゴメンな、あんなところ見せちゃって」


風嶺さんは、うつむきながら続けた…。


「…絢のやつ、あのまんまじゃあ、ホントに間違った方向に行っちまう。…せっかくいい素質持ってんだから、それを活かしてやれるように、これからしっかり指導してやんないとな…」


「風嶺さん…」


僕は少し顔を上げて、風嶺さんの方を見た。