渋谷さんが立ち去ってしまった後、僕と陽ちゃんは、しばらくベンチに腰かけていた…。




…何で僕はこういつも、自分の手の届かないところで、誰かに迷惑かけちゃうんだろう。


悪いことはしないで生きてきたつもりだったけど、なんだか僕、人に謝ってばっかりだ…。




『お前さ、ゴメンしか言えないの?』




そう言った佐藤くんの言葉が、胸に蘇る…。




…本当は、「ごめん」なんて言いたくないよ。


そんなふうに謝らなくちゃいけないような思い、誰にもさせたくないよ。


だけど僕は、ただ生きているだけで、これからもこんなふうに、誰かを傷付けてしまうのかな…?


傷付けたくない人のことまで、苦しませてしまうのかな…。


ねぇ、もしそうだったら、僕は、どうすればいい…?


誰も答えてくれるはずのない問いかけを、僕は見上げた藤の花たちに、心の中でつぶやいた…。