きっとこの人は覚えていないだろう。

だけどそれでもいい。
了承を得たという事実が何よりも大事だ。

できれば終わりなんて、来て欲しくもないけれど。



「だから、大事にしたいんです」


覚えていない既成事実なんかは欲しくない。
でも、言葉だけは俺の中に持たせていて欲しい。


「うん」

穏やかな表情の先生は……ああ、眠いのかな。

細められた目は、今にも閉じてしまいそうだ。
優しげにも見えるけれど、やっぱり眠いんだろう。軽く舟を漕いでいる。



「先生、眠いんなら寝てもいいんですよ?」


俺、帰りますから。
そう続けようとしたけれど、腕を掴まれる事で遮られた。


「じゃ、お前も来いよ」


予想外にも程があるその言葉に呆気にとられている間に、俺は敷かれっ放しの先生の布団の元へと連れてこられていた。



そうして俺は自分と戦い続け、眠れないままに朝を迎える事になる。




……あ、いつか言いたい。

今夜は寝かせませんよって。