「私の処女に終止符を打ってくれる人は現れない気がしてきた」
 溜息をつきながらイスを引いて座り込むと、みさとゆっこが顔を寄せてきた。

「彼いい顔してんのにねー」みさが言う。
「顔が良くても童貞じゃねぇ」ゆっこが訳知り顔で溜息をつく。

 好き勝手いいやがって、きっと千尋くんも好きで童貞でいるわけじゃないんだ。私のようにタイミングとか、きっとこう踏み出すきっかけみたいなのがなかっただけなんだ!

「なお? 何か反論があるなら口をパクパクさせてないで言ったらどうなの?」
 あゆみが呆れた顔して私に水を向けた。

「あ、いや。別に……」
 彼がなぜ童貞なのかを釈明しようとすると、実はすべてが私に直結することを悟り、私は口ごもり下を向いてモゴモゴと俯いた。

「ねぇねぇ、でもさー」

 あゆこが瞳の奥にきらりとした光を携えて、みんなを見回す。

「童貞って……すごいらしいよ?」

 人差し指を立てて、怪しく微笑むあゆこを見て、一同が固まった。