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廊下を歩くたび、後ろからひそひそと声が聞こえてくるようになった。
『神の御子なんだから、姫様がこの飢饉をなんとかしてくれればいいのに。』
今日もアミリアは聞こえないふりをする。
しかし、ちくりと心に見えない棘が残る。
いつもは半歩後ろを歩くジークは、最近はそっと隣に寄り添ってくれるようになった。
「気になさらないで。」
ぶれない声で言われ、アミリアは何とか笑うことが出来た。
「はい。」
隣を歩くジークが心配そうに自分をうかがっているのがわかる。
アミリアは努めて毅然と歩いた。
「…あの、申し訳ありませんが、お兄様のところに寄っても?」
「はい。」
心の棘を溶かすような、あたたかな微笑み。
あぁ、安心する。
この方はどうしてこうも私を楽にしてくれるのだろう。
アミリアは感謝の気持ちでいっぱいになった。
この気持ちを、どう伝えよう。
言葉では伝えきれない想いが、胸を渦巻く。
結局、気の利いた礼の言葉を口にできず、中途半端に会釈した。



