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いよいよ、飢饉の影響が比較的裕福な城下町にも出始めた。
いつもは陽気な人々も、ぴりぴりと神経をとがらせている。
城下を巡回しながら、ジークは注意深く様子を観察した。
パン一つの値段で、喧嘩は起きる。
こんな状況では、大乱闘になる危険性もあった。
最近、夜遅くまで執務をこなしているランバート様。
いつもはどんなに忙しくても、朝食夕食だけは一緒にとってくれたのにと、アミリア姫が嘆いていた。
心配そうに、王子の部屋が見えるホールで夜遅くまで座って待っているようになった。
使用人でさえ寝静まる夜更けまで、王子は執務室から帰ってこない。
姫は居眠りすらせず、ふらふらになった王子が部屋に帰って来るのを見届ける。
そして、部屋の明かりが消えるのを確認してから部屋に戻るのだ。
『貴方まで付き合わせてしまって、本当にごめんなさい。』
部屋に戻る道すがら、彼女は毎晩そう謝る。
ジークはいいえと首を振るしかなかった。
ジークとしては、彼女も心配だ。
最近、必要以上に気を張り詰めている気がする。
一緒に散歩をしていても、庭を眺めていても、時々彼女は何かを思いつめているかのような表情をする。
何か心配事がおありですかと訊いても、いいえという返事しか返ってこない。



