ジークがアミリアの護衛について、数日が経った。



最初はお互いに他人行儀なままだったが、最近はだいぶ打ち解けてきたと思う。



彼はやっぱり優しい人で、アミリアが困っているとさり気なく助けてくれる。



日常の事細かなことに気が付く人だった。



そのせいか、無条件に彼に信頼を寄せるようになった。



今日も、彼は音楽を習いに行くアミリアの3歩後ろを付き従ってくる。



いつも彼は律儀に距離を保つのだ。



静かな足音が、ついてくる。



カシャ、と腰に佩いているであろう剣が立てる音がジークの存在を示していて、なんだか安心する。



何事もなく、いつも通りに音楽室に着くと、アミリアはジークを振り返った。



「お疲れ様でした。
私はもう大丈夫ですから、訓練に参加されてはいかがですか?」



そう提案すると、ジークは驚いたような顔をした。



そして、微笑んでゆっくり首を振る。



「いえ。
私は姫の護衛を仰せつかっています。
姫と離れるなど、言語道断。
ここでお待ちします。」



いってらっしゃいませ、と微笑む彼に、申し訳ない気持ちになる。



人が一緒にいるのだから、少しくらい離れても大丈夫なのに。



では、と会釈して、アミリアは部屋の中に入った。