「はい、これ。
お兄様と一緒に植えた薔薇が綺麗に咲いたから。」


「…お兄様と?」



アリソンが、口元を歪めた。



しまった、と後悔する。



アミリアには出来て、アリソンには出来ないこと。



それを口にすると、いつも彼女は怒るのだ。



外に出られない彼女は、アミリアのように自由に動くことができない。



案の定、アリソンの機嫌はさらに悪くなった。



「…マドレーヌも、焼いてきたから。」


「どうも。」



つっけんどっけんに返事をしたアリソンだったが、綺麗にラッピングされた贈り物を見て、目を丸くした。



「これを、お姉さまが?」


「えぇ。
…やっぱり、コックに作ってもらいましょうか?」


「いいえ、嬉しい…。」



さっきの不機嫌さはどこへやら、アリソンは少女のように微笑んだ。



この子も寂しいだけなんだわ。



いつも、彼女をみるとそう思う。



構ってほしくて、でも誰も構ってくれない。



ちやほやされているアミリアが憎い。



でも、残されたたった一人の自分の分身を憎み切れない。



そういったところだろう。