嘘だ。



そんなの、嘘だ。



俺は、信じない。



ジークは目を見開いたまま、動かなかった。



正面ではラジャが、顔を歪めて立っている。



「ジーク…。」


「……………一人に、してくれ。」



ジークはラジャに背を向けて歩き出す。



石造りの床が、コツコツと響いた。



がしゃがしゃと、頭を掻き回す。



「嘘だ。」



声に出して、つぶやいた。



ミアが、いなくなる。



結婚、してしまう。



会えなく、なる。



永遠の、別れ。



頭では理解していても、心では納得できなかった。



お互い、別れは来るものだとわかっていた。



だからといって、用意ができているわけではなかった。