その後ろからはマリアが必死に追いすがる。



「姫!」



老婆には酷だ、と思いつつ、追いかけることができなかった。



自分はどこまで子供じみているのだろう。



追いかけるのがランバート様じきじきに申し付けられた任務だというのに、足が動こうとしない。



きっと殺されはしないだろうと、高を括っている自分がいる。



愛していると、言ったのに。



離れたくはないと、思っていたのに。



今だって、確かに愛しているのに。



拗ねてしまう。



どうも、ランバートが到着したらしい。



それでアミリアが走っていったのかと合点がいく。



久々の再会を喜び合うんだろうな。



泣きながらランバートを抱きしめるアミリアが想像できる。



王子、無事だといいな。



きっと、疲れ切っておられるだろう。



しばらく公務を控えて休んでほしいというのがジークの願いでもある。



アミリアはきっとそれを強制するに違いない。



まだ国王もおられるし、王子が当分休んだところで支障はないだろう。



ジークは、ランバートを連れだって歩いてくるアミリアを想像して待った。



ところが、どれだけ待ってもアミリアすら帰ってこない。



何かあったのかと思ったが、城中が静かなのでそれはないだろう。



結局、夜半になっても人影すら見えなかった。