そんなことは言っても。



「だいたい何回も言うように、女にプロポーズ拒絶されたくらいで一国を潰しにかかる奴がおかしいんだ。
姫なんて、他国に腐るほどいるだろうに。」



こんなことを言っても、今日はダニエルは何も言わなかった。



後ろで神妙な顔つきで控えている。



「な、ミア。
これまで以上に危険になる。
絶対にジークから離れるな。
いいな?」


「はい。
でも、ジーク様も軍に加わった方がいいんじゃ?」


「この戦争は、お前をとられたら負けなんだ。
お前が大将みたいなもんだ。」


「大将はお兄様ですよ?」



もどかしげに、ランバートはかぶりを振る。



「いいか、聞け。
何か危ないなと感じたら、何も考えずに助けを呼べ。
城にいるからといって安全なわけじゃないからな。」


「はい…。」



ごめんなさい。



私のせいで、ごめんなさい。



「…結局、アリソンも意味がありませんでしたね。」



ランバートはゆっくりとアミリアを振り向いた。



「……そんなことはない。」



下がれ、と言ったランバートの声は、どこか沈んでいた。



お兄様も後悔しているんだろうか。



ドアの隙間から、疲れたように眉間を揉む姿が見えて、心が痛んだ。