……――パタパタ。
遠くで足音が聞こえる。
走るような足音だ。
もうそろそろ面会時間は終了ですよ。
看護師さんの声がする。
すみません、少しだけ。
聞いたことのある声が言う。
誰だっけ。
眠くて頭が働かない。
でも今、たぶんすごく聴きたかった声だと思う。
パタパタ。
足音が近づいてくる。
すぐそこで止まり、次いでシャッ…と金属の擦れる乾いた音が遠慮がちに響く。
カーテンの開いた音だ。
手放しかけていた意識を手繰り寄せる。
目を開けなければ。
そこにはきっと、一番見たい顔があるはずだから。
きっと、一番会いたかった人が、居るはずだから。
「……――高橋くん」
凛とした、けれど優しい声に呼ばれる。
ゆっくりと瞼を持ち上げた。


