「……わかっていた。わかっていたはずなんだ。」

「…………」

「高橋が底抜けの馬鹿(※強調)だということくらいわかっていたはずなんだ。」

「…………」

「だが、高橋。今回はさすがの俺も呆れたぞ。」

「…………」

「まさか入学式を忘れていたなんてサルも聞いて呆れるだろうに。」

「…………」

「お前のことをウマシカと呼んでいたがさすがにウマとシカに申し訳ないだろうから、他の呼び方を考えることにしよう。」

「……坂本……もうやめろ……俺のライフはすでに0だ……」


空は霞んだような淡い青。

春の空だ。

風も穏やかで空気もあたたか。

幸せオーラ全開の人々。


……の、端っこで不幸どん底オーラ全開の俺。


説明しよう。

午前8時、爆睡していた俺は一本の電話で起こされた。いつまで経っても鳴り止まない携帯の着信にしぶしぶ出ると、相手は例の坂本だった。一体なんの用だと思っていた俺は、次にヤツが放った一言で完全に目覚めることとなる。


『高橋、ひとつの可能性として問おう。お前、今日が入学式だということを忘れてはいないか?』


直後に飛び起きていた。