情けない。
本当に情けない。
一緒に逃げるって言ったくせに。
一緒に戦うって言ったくせに。
なんで俺は今こんなところで倒れてるんだ。
なんで俺はいつもこうなんだ。
助けたかったんじゃないのかよ。
隣に引っ越してきた神坂レイを。
同じ学校に入学した神坂レイを。
隣の席になった神坂レイを。
ノートで会話して、たまに笑ってくれて、ありがとうって言ってくれて、人のことばかり考えて、とても優しくて、とても大切な……。
……ふっと。
頬をかすめた手があった。
いつだったか、思わず泣いてた俺の頬を包んでくれた、あの優しい手だった。
「……――ありがとう、高橋くん」
耳元で穏やかな声が言う。
“大好きでした”
――……あぁ、そうか。
離れて行く、あたたかい手。
――……やっとわかった。
遠ざかる彼女の背中。
――……どうして俺はこんなにも、彼女を助けたかったのか。
動け、追え、手を伸ばせ。
――……好きなんだ、彼女のことが。
どうしようもなく。


