「私が、勝手に巻き込んだだけだっ……だからそれ以上、彼を傷つけないで……ッ」
髪の毛から手が離れる。
再び地面に頬をつけた俺は、遠のきそうな意識を彼女の言葉に集中させる。
「……そう、それでいいの。もう一度言う、彼は関係ない。だから今後一切、手を出さないと約束して」
……俺は関係ない、か。
回らない頭で自嘲する。
すぐ側に居たSPが立ち上がる。
「……こちらからも約束願いたいことがある」
SPの誰かが口を開く。
「今後、貴方が逃げ出さないと言うのなら、その約束を守ろう」
ダメだ。
瞬間に思った。
ダメだ神坂レイ、その約束を了承してしまえば、お前は一生……!
「――わかった。約束する」
彼女の凛とした声が、そう言った。
「……それでは、こちらも貴方の願いを聞き入れよう」
立ち上がったSPが離れて行く。
……待て。待てよ。
体が動かない。
……ダメだ、ダメだ神坂レイっ…!
声すら出ない。
……行くなッ!
指先ひとつ、動かない。


