「お願いやめてッ!!」
遠くで彼女の声が響く。
ナイフが少しずつ食い込んでくる。
もはや痛みもマヒして呻き声すら出ない。
動けない。痛い。熱い。
「おねが…お願いだからやめてッ……!!」
彼女の声が遠くなる。
それでもナイフは離れない。
ナイフが横に引く準備をする。
……あー、俺ここで死ぬのかな。
死ぬしか選択肢がないような気もするけど。
結局俺は、神坂レイを助けられないままだったのか。
どこまでも情けない人間だな俺ってヤツは。
大切な女の子ひとり、助けられないまま、ここで――……
「……――やめてぇえええええええ――――ッッ!!!!」
グラウンド中に轟く声。
聞いたことも無いような彼女の声だった。
金切声。悲鳴。どれに部類していいかわからないような声。
驚いたように、俺の首からナイフが離れた。
ツーっと、首元を血が伝って行った。
「……その人は、関係ない…っ」
荒い息の中、彼女は必死に声を振り絞る。


