――バサバサッ!!
すぐ近くで何かが大きな音を立てた。
心臓が跳ねる。
息が詰まって叫び声は出なかった。
しかし、
「……高橋くんっ…!」
“何か”を避けた拍子に、街灯の下に入ってしまった。
瞬間、鋭い視線が俺を射抜いた。
――しまった……ッ!
SPに見つかったのは明白だった。
「逃げて!」という神坂レイの声に反応した足がアスファルトを激しく蹴る。
街灯を出ても視線は消えない。
すでにマークされていた。
追ってくる気配。足音。
神坂レイを抱きかかえる腕に力がこもる。
彼女だけは落とすまいと必死に抱えた。
死に物狂いで走る。
もつれそうになる足に苛立ちさえ覚える。
背後に迫る足音が増えた。
耳元で彼女が息を止めたのがわかる。
見えてきた学校に転がり込む。
逃走劇は確実に幕を閉じようとしていた。
頭上でカラスが2度鳴いた。
それはある意味、次の幕へのブザーだった。


