隣の彼女が厨二病だったんだけど。





けれど数十メートル走って、また立ち止まってしまう自分が憎い。


「……ぜぇ…はぁ……酸素ボンベ欲しい……」

「……私やっぱり下りた方がいいと…」

「ダメです!」

「……強情だ、高橋くん」

「今ここで神坂さんを下ろしてしまったらすべてに負けた気がするから下ろさない」

「そんな大げさだよ」

「あといい運動になると思うんだ」

「15歳が言うことじゃない」


そう言いながら神坂レイは笑う。

笑っている振動が肩から伝わってきてくすぐったい。


「……高橋くん、身長何センチ?」

「え?えーっと……この間の身体測定だと…170?くらいだったはず」

「そう。……170センチの君の世界は、こんな風に見えているんだ」


遠くを見るような声に、俺は横目で彼女を見た。

向こうの方を見ている神坂レイの表情は、とても穏やかだった。


「170センチの世界はどうですか?」

「……高くて広い。視界が開けて見える」

「…神坂さん何センチ?」

「私は155センチかな」

「その世界も見てみたいなー155センチ世界」

「きっと低いよ?」

「でもその世界でしか見えない物とかありそう」

「……君に見下ろされる世界?」

「うわ何それすげぇ嫌だ!」


笑って、また地面を蹴る。