それから神坂レイを見下ろすと、彼女もこちらを見上げていた。

不安げな目の色をしている。


「……本当に、私を抱えて逃げてくれるの…?」

「うん」

「本当に、私と一緒に、戦ってくれるの……?」

「うん」

「ほ、本当に……っ」


うっせぇなあもう!!

堪忍袋の緒が切れた、じゃないけど、それくらいの勢いで俺は神坂レイを抱き上げた。


「いい加減信じろ!!」

「ちょ、ちょっと君、いきなりっ…それも肩に担ぐってどういうこと!?」

「残念ながら俺お姫様抱っことかしたことないから落としそうで怖いんです!!」

「私は肩に担がれたことなんてない!こっちの方が落ちる!」

「落とさねぇよ!!死んでも落とさねぇよ!!」

「そんなことを言われてもっ……」

「あああもう!言っただろ!一緒に逃げるし一緒に戦うって!!だから落とさない!!絶対にだッ!!」

「…………っ」

「今だけでもいいから、俺を信じろッ!!」


ドアを開ける。

アパートの下にはもう誰も居なかった。

急いで階段へと向かう。神坂レイはとても軽かった。

肩に担がれた彼女の顔は見えない。

けれど確かに、「うん」と言った。

首にぎゅうとしがみつく彼女を落とさないようにしっかり抱きしめて、俺はアスファルトを蹴った。