今までのセリフを静かに聞いていた神坂レイが、ドアから離れてうなずく。
「……すごい、ホントに気配が遠ざかって行った」
「アレだけ騒げば住民も気づくしね……」
あとあのわけわからん日本語に思わず逃げ出したくもなるよねっていう。
渡辺先輩が静かになったかと思うと、次は俺のポケットに入っている携帯が震えた。
取り出してサブディスプレイを確認すると、相手は坂本だった。
ソッコーで通話ボタンを押す。
「坂本ぉおおおお!!ありがとう!!そしてありがとう!!」
『電話でデカイ声を出すな。そして言っておくが、恩を仇で返すなよ。』
「存じております!!」
『あと、聞こえていたとは思うが渡辺先輩が……――あたし超頑張ったよ!!』
聞こえる声がいきなり先輩のものになったので、一瞬脳の判断が危うくなった。
「先輩マジあざっす!!ちょっと日本語が難しかったですけどあざっす!!」
『いいよいいよ!スーツ超素敵だったから!やっぱり黒スーツっていいよnうわなにをするやめ……――この人は俺が黙らせておくからさっさと行け。』
『うわー!おれがだまらせておくだってー!あたしなにされるのー!きゃーきゃー!』とか白々しすぎる悲鳴を上げている先輩は置いておくとして。
「ホンットありがとう坂本!お前が居てくれてよかったわ!」
『はいはい。じゃあな。』
ブチッと通話が切られた。
あの坂本がなんのツッコミも悪態もつかなかったぞ……明日は地球崩壊の危機か……。
いや、今はそんな阿呆なことを考えている暇はない。
俺は携帯をポケットに押し込むと、座り込んでいた状態から跳んで立ち上がった。


