自然と出てきた言葉だった。
それは紛れもない本心で。
神坂レイはまたうつむいた。
長くて綺麗な黒髪が、するりと華奢な肩から落ちた。
「……馬鹿みたい」と、彼女は言った。
「…こんなに頼りたくなってしまうなんて、馬鹿みたい…」
「バカは楽しいと思う」
「もうきっと、1人じゃ戦えなくなる」
「じゃあ、俺が一緒に戦うことにする」
「……君、戦えるの?」
「神坂さんが居るならたぶん大丈夫!」
説得力皆無な俺の宣言に、けれど彼女が笑ってくれたので良しとする。
神坂レイはひとしきり笑ってから、不意に顔を上げた。
そうかと思えばじっと微動だにせず、表情をこわばらせる。
気になって俺が尋ねようとすると、彼女は自分の口元に人差し指を持っていき“黙って”というジェスチャー。
言われた通りに黙り込む。
数分そんな時間が続き、神坂レイはゆっくりと口を開いた。
「……来た」
「え」
「今きっとアパートのすぐ下で様子をうかがってる」
そう言ってから、彼女は立ち上がろうとする。
しかし、
「うっ……」
小さく呻いてから片足を押さえた。


