彼女は首を横に振る。
口元が震えていた。
「そ、それはダメ…っ!君にはこれ以上頼れない…!」
「神坂さんが俺に頼ることに関して上限は設けておりませんが」
「でも、でもこれは、普通の意味で頼るのとは違うから…!」
「普通と普通じゃないっていう理由は受け付けてない」
「でも、でもっ……!」
「うん」
彼女は一度唇を噛む。
俺の服を掴む手に力がこもった。
「私は……高橋くんに傷ついてほしくない……ッ!!」
息が詰まるような声だった。
きっともう一人じゃムリなことくらいわかりきっているはずだ。
なのにまだ、いまだにこうして人のことばかり考えて。
今度は俺が唇を噛む番だった。
「……もうとっくの昔に傷ついてるヤツに言われたくない」
「……え」
「何回も何回もひとりで傷ついて、ボロボロなお前には言われたくないって言ってんの」
「な…にを……」
「今の俺は無傷だよ。だから1回くらい傷がついたってすぐに治るよ。でも今、神坂さんが一人で傷ついたら、きっともう治らないよ」
「…………っ」
「そうなってほしくないから、俺は神坂さんと同じ傷を負ってもいいよ。神坂さんと同じ世界が見えるならそこまで行くよ」
「…………っ」
「……俺だって、神坂さんに傷ついて欲しくない」


