だって考えても見て欲しい。

まったく気配を感じさせずに背後へ回り込まれ得体のしれない何かを背中に突き刺されれば誰だって間違いなく死ぬなこれと思うはずだ。

10人中9人はそう考えるはずだ。

残りの1人は「フッ……気配を感じさせずに攻撃を仕掛けてくるとはなかなかやるな……だが甘いッ!!」とか言いながら立ち向かう痛いヤツとかかもしれない。

(でもこれ死亡フラグな気がする。)


あ、それか「アナタに殺されるなら本望よ!」とか言って自ら刺されに行こうとするヤンデレとか。

(いやこれも死亡フラグだ。それも救いようがない。)


とにかく、そのどちらにも当てはまらないそこらへんに居る一般人である俺はもちろん10人中9人の中に入っていたわけだ。

朝っぱらから嫌な汗をかいた上に異常な緊迫感を味わわされたためにもはや1日分の気力を使い果たした感が否めないというか。否めない。


まあでもお隣さんがマジでリアルに美少女だったとかそういうところを考えればそんな疲れもすべて吹っ飛びそうですけどね!

どうしようねこれはもうラノベのチート主人公とかギャルゲのハーレム主人公とかの立ち位置なんじゃないだろうか!

いやギャルゲやったことないけど!

(※チート=最強)

(※ギャルゲ=美少女ばかり出てくるアレ)


「……高橋くん」

「…………。え、あ、はい?」

「そこ、どいてくれる?」

「え?」

「玄関の前。私、部屋に入りたいのだけれど」


そういえばずっと玄関の前に突っ立ってたことをすっかり忘れていた。