肩が激しく上下している。
必死で走ってきたことは一目瞭然だった。
彼女は何度か息を吐き、ドアを閉めて玄関、すなわち俺の目の前に膝をついて座り込んだ。
俯いていて顔はよく見えない。
しかし、確実に何かがあったことは理解できた。
「……か、勝手に上がって、しまって……ごめ、なさ……」
「いいから、そんなこといいから!何があった!?」
「……帰る途中…アイツ等が襲撃してきて……なんとか隠れて、逃げてきたんだけれど……」
喋るのも辛そうなほど息が荒い。
見ているこっちが辛くなってきて、思わず背中を擦ってあげた。
「ゆっくりでいいから」
「……うん…でも、時間がない……」
「え?」
「ここが……バレたかもしれない……」
背筋が凍った。
「ごめんなさい…きっと私以外の人間には危害を加えないとは思うの……でも危険だから、君は逃げてっ……」
俯いたまま、ぎゅっと俺の服を掴んでそう告げる神坂レイに。
俺は「断る。」と即答していた。
神坂レイが驚いたように顔を上げる。
泣きそうな顔だったから、なおさら逃げる気なんて起きない。


