そんな彼女が居なくなったら、俺の世界はどうなるんだろう。
きっとなんにも変らないのかもしれない。
隣が空き部屋になって、隣の席が空席になって、ノートの会話も思い出になって、そういえばあんな子が居たなって坂本と話したりするような、世界に……。
ならない。
っていうか、したくない。
神坂レイに居なくなってほしくなかった。
隣の部屋は神坂レイがいい。隣の席は彼女じゃなきゃダメだ。
ノートの会話をしてなきゃ授業なんて寝てる。
神坂レイが居なかったら、自分が誰かのために泣けるんだとか、怒れるんだってことが、一生わからなかったかもしれない。
なんてもう、考え出したらおかしかった。
もう俺の世界の中心には神坂レイが居て、彼女じゃなきゃダメな世界になっていたようだ。
つまりそれって、それってさ。
神坂レイのことが、俺はすごく――……
……――バンッ!!
すぐ傍で弾けた音は轟音に思えた。
反射的に振り返る。
部屋の玄関が開いていた。
夕暮れをバックに、今の今まで考えていた張本人が立っていた。
神坂レイが、ドアに寄り掛かって立っていた。


