とにもかくにも、渡辺先輩の誤解は解いておいた。
でももし先輩の言っていることが、神坂レイにとっても同意できることだったとしたら。
だったとしたら……なんだろう。
だったとしたら……なんか期待する。
いやなんに対する期待かって聞かれたらわかんないけど。
なんだろう、なんだろうなあ……。
もし神坂レイが俺のことを信頼してくれて、事情を話してくれたのだとしたら、それはもちろんうれしい。
今なら空も飛べる的な勢いでうれしい。
でももうひとつ、この、期待というこれはなんだ。なんなんだ!
「あ、っていうかね、あたし今思ったんだけどね、神坂レイちゃんって、住む場所転々としてきたんでしょ?じゃあそのSPとかが追ってくる限り、ここからも出て行っちゃうってことだよね?」
頭を抱えてごろごろしそうなところまで考えていた俺は、渡辺先輩のその言葉にピタリと停止する。
壊れかけのロボットのごとくガタガタと首を回し、先輩へと顔を向けた。
「……マジっすか……?」
「んーそうとも限らないけど、でも敵が追ってくる限り冒険は続く!みたいな」
「そ、そ、そん、そんな、」
「わあ、少年わかりやすいね!今すごく“絶望した!”って顔してるよ!」
「いや、だって、神坂レイが、出て行くとか、」
「ただの予想だよ!大丈夫!もしそうなっても少年が引き留めてあげればOKさ!ほら、後ろから抱き留めてね?『行くな!オレにはお前が必要なんだ…!』とか言っちゃえばオンナノコはイチコロさー!」
「…………おえっ。」
「おい吐くなよ坂本!!同意せざるを得ないがそこは耐えろよ!!どこまでも不憫キャラの俺のためにも!!」
「だが断る。」
「ぶわっ!!」
「高橋くんって復活早いよね?早すぎるよね?」


