事情を話すと、渡辺先輩は落ち込みながらも「そっかあ」と納得してくれた。
正座をしてしゅんとする渡辺先輩が小動物的な何かに見えないこともない。
「そっか、そうだったんだあ…神坂レイちゃんにはそんな事情が……」
「だから美術となんら関わりのないうちの高校に入学したわけか。」
「あたしなんにも知らないで…ひどいことしちゃったなあ……うっうっ」
「それにしても鬼才だな神坂レイは。勉強も運動も独学でアレとは。」
「でも神坂レイちゃんの絵大好きだったからもう一回見たかっただけなのお!信じてください~!うっうっ」
「もはや国宝レベルな才能だ、追ってくるSPから国を挙げて守るべきだろうに。」
「あの失礼ですが2人とも人の部屋でまったく噛み合ってない会話するのやめてもらえます?」
鼻水をすすりだす渡辺先輩と国の話に発展している坂本に、この2人を一緒に呼んで説明すべきではなかったなと後悔したりする。
まあそれも後の祭りってヤツだ。
今日は休日で、学校がないために2人を俺の部屋に呼んだ。
もちろん渡辺先輩の携帯とか知らないから情報通の坂本に聞き回ってもらったわけだが。
別に学校で神坂レイの事情を話すのもよかったかもしれないが、学校の休み時間には制限があってゆっくり話せないと思ったので、この際まとめて話してしまえと思った次第である。
ちなみに神坂レイご本人からの了承は得ている。
そのご本人は現在外出中なのでこの場にはいない。
(外出すると言った彼女に俺はもちろんついて行くと申し出たのだが、街中では襲撃して来ないから大丈夫と言いくるめられてしぶしぶ居残り)
(っていうか俺がついて行ったところで神坂レイの足を引っ張るだけにしか思えない)
(居残ってよかった)
渡辺先輩はティッシュで鼻をかんでから、お茶を飲んで息をつく。