……やっとわかった。
彼女がどうして、他人を寄せ付けようとしないのか。
巻き込みたくなかっただけなんだ。
傷つくのは自分だけで十分だと思っていた。
他の人を巻き込んでまで逃げることはないと、思っていたのかもしれない。
他の人を巻き込んでしまうくらいなら、地獄に落ちた方がマシだと。
そんなバカな話があるか。
「絵を描くことでしか神坂レイは必要じゃない……なんて俺言ったことない」
無意識に紡いでいた言葉。
俯いていた神坂レイが、顔を上げた。
涙を流していない彼女は、本当に強いなと思った。
強いけど、でもホントは、弱いんだ。
「……言ったじゃん、さっきも。神坂さんにありがとうって言われると俺はうれしい」
「…………っ」
「あとこの間の、冷却シートくれた時とか!神坂さんが居なかったらあのまま氷で大惨事だったし!」
「…………っ」
「あと、文通っていうか、ノートの端っこで会話するのも楽しいし!俺の字汚いけど読んでくれてるっていうのがもう感動的だし!!」
「…………っ」
「あと、あとは……神坂さんが笑ってくれると、俺すっげー幸せな気分になる」
「…………」
「だ、っから……えーっとその、なんていうか!神坂さんは絵だけじゃなくて、傍に居てくれるだけで俺はもう十分って言うか……!!」
あーもう何言ってるかわかんなくなってきた。
わかんなくなってきたけど。


