表情は笑顔でもないし照れている風でもないし、普段の神坂レイなのだが、口調が少し柔らかくなっていて今までとの距離の違いにテンションがヤバい。
それをどうにか抑え込んで「う、うれしいです!」と答える俺がいわゆるバカ正直というヤツですね。
すると神坂レイは、少し考えるような素振りを見せて。
「……なんだか私も、君がうれしいと、うれしいような気がする。」
クソまじめな口調でそう言った。
確実にデレタイムである。
神坂レイのデレターンでちょっともうにやけそうなのが我慢なりませんね!!
と思いつつ口元を押さえて俯きながらどうにかこうにかにやけるのを隠していると、神坂レイが無事な方の足で立ち上がる。
反射的に支えようとしたら、彼女は「大丈夫」と言ってからこちらを見下ろした。
「それじゃあ、私着替えるから。部屋で少し待っていてくれる?」
「きがッ……!?」
「……血だらけの服だと、君、倒れそうだから。あと血の匂いもするし、気持ちが悪いの。」
「気を使っていただいてありがとうございm出ます今出て行きまsうわいてっいってすんませんうぉがはっ」
「…………。高橋くん、そんなに焦らなくていいから、落ち着いて。」
風呂場の出入り口でデコを強打し肩を強打してこけそうになってる俺に向かって神坂レイの冷静な声がそう言った。
もうやだ死にたい。
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神坂レイはこの間のようなシンプルな服装で部屋へと入ってきた。
あんまり部屋の中を見回すのはよくないような気がして死に物狂いでテーブル一点を見つめていた俺に神坂レイが「……テーブルの上に何かいるの?」と割と本気で問いかけてきたのはムリもないことだと思う。


