椅子が倒れる音が響く。
鼓膜が激しく揺れた。
誰かが悲鳴を上げる。
教室中が凍りつく。
入学式を連想させた。
「余計な詮索をするな、余計な世話を焼くなッ!!」
「…………っ」
「私は私のやりたいようにやると決めた、誰にも頼る気はないッ!!」
「…………っ」
「もう一度言っておく……命が惜しければ、私に関わるな。」
これは忠告だ、高橋翔平。
目の前で黒髪がなびく。
凍りつく教室で唯一息をするのは彼女だけ。
そんな空間で、神坂レイはたしかにこちらを見ていた。
冷たい瞳は果てしなく氷のようで。
けれど何かが見え隠れしていた。
神坂レイが教室を出て行く。
途端に春が来たような空間に変わる教室。
「なに今の…」
「あいつ怖ぇー…」
「よく退学にならなかったよね」
「また停学か?」
クラスメイト達が口々に言う中、前の席から坂本が「高橋、何を言ったんだ?」と尋ねてくる。


