一瞬にして心臓が凍りつく。
「……――動くな」
背後からの声。女性のものだ。
凛とした冷たさを持った声。
「悪いようにはしない。だが動けば……」
背中を刺すような何かに僅かな力が籠められる。
嫌な汗が全身に浮かぶ。
……嘘だろ、さっきまで誰も居なかったのに、いつの間に……!
「……質問に答えを。問1、君はここで何をしている」
「…………え、っと、」
有無を言わせず始まった問いかけ。
背中を突くものはなんだとか、答えたら助けてもらえるんだろうかとか、そういう疑問や恐怖に似た何かが脳内をぐるぐると巡る。
しかし。
「答えを」
言葉と共に背中を突き刺す何かが更に食い込んでくる。
答えるしか道はないか……!
「……誰か、引っ越してきたのかと思って、表札を見ていた」
「問2、君は何者だ」
それを知りたいのは俺の方である。
よほど言いたかったが、この現状で言える立場ではないことくらい重々承知しているつもりだ。


