隣の彼女が厨二病だったんだけど。





神坂レイはわかりにくいだけで実は優しいんじゃないかと思う。

っていうか絶対優しい子だと思う。

こんな汚い字を読んでくれるわけだし、ちゃんと返事もしてくれるし。

もしこれが、仮に坂本だとしよう。まず読まない。言い切れるレベルだ。ヤツは読まない。

「高橋の字を解読する時間があったら広辞苑一冊余裕で読めている。」とか言う。

それが坂本でなくとも、たぶん読まない。俺の字どんだけ汚ぇんだっていう。


とにかく、神坂レイは絶対に優しい。

けれど入学式のあれがアレなだけに、みんな遠巻きに見てしまっている。

神坂レイも他人と関わりたくない性分(だということは俺が身に染みてわかっている)なので、わざわざ自分から話しかけようともしない。

いや、それだけだったら、ほとぼり冷めれば誰か彼か話しかけ始めるだろうと思わなくもない。

が、それを見込めない理由がある。



「…えー、じゃあ、神坂。この問題解いてみてくれるか」

「はい」


解答に指名された神坂レイは、いつもの声色で返事をしながら立ち上がる。

迷いのない歩き方で黒板へと向かった彼女は、チョークを手に取るや否や、問題の下に回答をスラスラと書いていく。

しかも応用問題。

それを悩む時間ゼロで、である。


理由はこれだった。

神坂レイは、勉強ができた。

数学だけじゃなく、理科も国語も英語もすべて。

誰が教えなくても自力で解ける頭脳の持ち主だった。もはや「先生?なにそれ、たべもの?」状態である。