「み、神坂さん!」
ドアを潜った神坂レイがピタリと止まり、こちらに横顔を向ける。
「傷、治ってよかった、っすね…」
余計なことを言ってしまったんじゃないかとか途中で思ったがために、尻切れトンボのようなセリフになってしまった。
神坂レイは何も言わず、ふいっと顔を背ける。
しまった怒らせたかまたかまたやっちまったのか俺はぁああ!!
ちくしょう、もう何も言わない。言わないんだからね!!
「……――今日は呼び捨てじゃないの」
…………。
「え?」
バタンッ。
目の前でドアが閉まる。
ふっと、何かの匂いが漂った。
……なんだこの匂い。
そしてなんだ、今の神坂レイ。
何か言ったように思えたが気のせいか。
まあいいや、とりあえず神坂レイに会えたからもうそれだけでいい夢見れる。
目標達成で清々しいかぎりだ。
数日後、神坂レイが学校に復帰するのが楽しみで仕方ない。
俺が隣の席だと知ったら、たぶん彼女のことだから、また「関わらないで」って言うだろうけど。それももはやご愛嬌の域である。


